今年の選挙の結果、ブラジルの連邦議会は設置以降20年間で、その構成が最も大きく変化し、多く の伝統的政党や政治家が新人議員集団に勢力を譲る格好となった。国家主義的でアンチパテント 政策を支持する議員らに代わり、経済的自由主義を支持する右派の議員が多数当選し、次期大統 領のジャイール・ボルソナーロ氏の社会自由党(PSL)の議席数が最も伸びた。ボルソナーロ氏は 既に、キリスト教福音派、農村部土地所有者層、治安政策強化容認層を支持基盤とする議員らの支 持を取りつけていると言われ、政権支持派の議員の票数を合わせると300に上ると推定されてい る。議会が保守的な性格を増すことで、左翼政権時と比較して、右派の大統領の政策が支持される 傾向が強くなると考えられる。
連邦議会
ブラジルは、下院と下院の二院制を採用している。1990年の議会設置以降、その構成が最も大きく 変化し、今回の選挙により上院議員の所属政党数は21、下院議員の所属政党数は30となり、議会 内の著しい多党化が進んだ。
派政党左 中道政党 政治的立場別(政党別)の議席の獲得数・喪失数
保守派の機運が高まったことで、右派政党・政治家の勢力が増す結果となった。約15年政権を担っ た労働者党(PT)は多数の議席を失った一方、それまで極小政党だったPSLは議席数を大幅に伸ば
した。左派政党への国民の支持は低迷し、ボルソナーロ氏の大統領就任で、2019年以降の4年間 にわたって、保守的、リベラルな経済政策が中心的に実行されることが予想される。
ボルソナーロ氏への支持
ボルソナーロ氏が、選挙運動中にキリスト教福音派、農村部土地所有者層、治安政策強化容認層 を支持基盤とする議員の支持を取り付けたことを考慮すると、議会では、政権支持派の議員が300 人に上ることが予想される。下院ではこの数が全議席の過半数を占めるため、次期大統領の提出 する法案がより議会を通過しやすくなることが考えられる。
下院
下院の構成は、議会の設置以降、約20年で最も大きな変化を遂げ、議員の52.4%が入れ替 わった。議員の所属政党は30党と多党で、右派政党議員が増え、中道政党議員が減り、左派 政党議員の数は同等となった。
定員513人のうち、244人(48%)が再選され、269人(52%)が初当選した。372人が公職経 験者で、55%をリベラルな経済政策を掲げる政党の議員が占めている。国家主義的で、ア ンチパテント政策を支持する政党の議員は全体の28%となっている。
政党別の議員数(下院)
ブラジルの伝統的政党であるブラジル民主運動党(MDB)、ブラジル社会民主党(PSDB) は、本選挙で最も下院の議席を失った。PSLは51人の当選議員を出し、PTは13議席を失っ た。
政党別の議席獲得・喪失数(下院)
上院
上院議員の58%が入れ替わり、議会設置以降で最も大きな変化となった。本選挙では81議 席の3分の1(54議席)が争われ、85%が入れ替わった。軍政末期以降で最も多い21政党と なっている。本選挙で争われた54議席のうち、再選されたのは8人(15%)のみで、46人(85 %)が初当選した。この46人のうち、公職経験者は9人となっている。47%をリベラルな経済 政策を掲げる政党の議員が占め、国家主義的で、アンチパテント政策を支持する政党の議 員は全体の22%となっている。
政党別の議員数(上院)
注: 本選挙で争われたのは、全81議席のうち54議席(3分の2)のみ。
下院と同様、MDB、PSDBが、本選挙で最も上院の議席を失った。PTは3議席を失い、PSLが4 議席を獲得した。PSLはこれまで上院の議席を占めたことがなかったため、大きな飛躍と言 える。
政党別の議席獲得・喪失数(上院)